「多様性」について学びたいと思ったときに読んだ本

この記事は Rails Girls Japan Advent Calendar 2021 の 12 日目の記事です。

前回 5 日目は @neutral2010 さんの「Rails Girls Gathering Japan 2021 スタッフとしての活動記録」でした。

Rails Girls Japan Advent Calendar 2021 は空いている日がまだまだありますので、これからでもぜひ参加してください!)

はじめに

こんにちは。 cobachie です。

Rails Girls Japan のメンバーとして、日本各地での開催をサポートしたり、 最近では Rails Girls Gathering Japan の運営をしたりしています。

Rails Girls の目的はアファーマティブ・アクションです。 性別を理由に「技術」から遠ざけられてきた歴史や性役割の固定的観念によって生じている不利な状況を是正していきたい、という気持ちで活動しています。

Rails Girls に参加するまでは「多様性」や「ダイバーシティ」について「あったほうがよさそう」くらいの認識でいましたが、Rails Girls Japan のメンバーになってからは積極的に知識を深めていきたいという気持ちを持つようになりました。

特に今年はジェンダーに関する知識の必要さを感じるニュースを見る機会も多かったので、あらためて学ぼうと思うきっかけにもなりました。

ということで今回は、私がジェンダーバランスや多様性について学びを深めるために読んだ本たちを紹介したいと思います。

本の紹介

これまでに読んだ本(読みかけ含む)です。

この中からおすすめしたい 3 冊を以下に紹介します。

はじめてのジェンダー

はじめてのジェンダー論 有斐閣ストゥディア

「そもそもジェンダーってなに?」から知りたいと思って読んだ本です。

本書では「ジェンダー」を以下のように定義しています。

私たちは、さまざまな実践を通して、人間を女か男か(または、そのどちらでもないか)に〈分類〉している。ジェンダーとは、そうした〈分類〉する実践を支える社会的なルール(規範)のことである。

性差や性役割、恋愛、教育、差別、性暴力などジェンダーをとりまくトピックについて理解しやすいことばで説明されていて包括的に知ることができるので、入門の 1 冊としておすすめしたい本です。

各章ごとに参考書籍が紹介されているのもよいです。 個人的には「第6章 科学や数学は女には向いていない?」の生物学的性差についてが興味深かったので紹介されている本も読んでみたいと思いました。

多様性の科学

多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織

性別や年齢、国籍、信仰、ヒエラルキー、能力、価値観などさまざまな立場の人がいることを「多様性」といいます。 多様性のある集団では集合知がもたらされてイノベーションが起きやすくなったり組織の発展にも寄与すると言われるので、「多様性はあったほうがよさそう」という認識を持っている方も多いのではないでしょうか。

本書では過去の実例をもとに、多様性のない画一的な集団では盲点が生まれ失敗を引き起こしやすくなるということが説明されています。 つまり多様性は「あったほうがよさそう」というものではなくて、失敗を避け組織の衰退を防ぐためには「必要なもの」だということですね。

また、多様性は組織だけではなく個人にも求められます。 人は同じ考え方を持つ人と一緒にいると快適なので同類の人とばかりつながりがちですが、この状態では「エコーチェンバー現象(同じ意見の者同士でコミュニケーションを繰り返し、特定の信念が強化される現象)」につながるおそれが出てきます。 エコーチェンバーから抜け出し進歩するためには、自分とは異なる幅広い領域の人たちと交流して馴染みのない考え方や行動に触れることが大切であると述べられています。

様々なエビデンスをもとにした説明によって改めて多様性の大切さを確認できるので、私のようになんとなくで「多様性」を捉えている人におすすめしたい本です。

WORK DESIGN

WORK DESIGN(ワークデザイン)

世界各国の男女の格差度合いを示す グローバル・ジェンダー・ギャップ指数 2021 で日本は 156 カ国中 120 位でした。 ジェンダーギャップの解消や多様性が大切なのはわかっていても、なかなか改善されていないのが現状です。

本書では、行動経済学をもとに行動をデザインすることによって「無意識バイアス」を取り除きジェンダーギャップを解決する方法を提案しています。

無意識バイアスというのは、性別や人種、年齢などの属性を理由に自分では気づかないうちに抱いている偏見や固定観念のことです。 自分は偏見なんて持っていないと思いがちですが、例として以下の文章を読んでみてください。すぐに状況を理解できたでしょうか?

父親と息子が交通事故に遭った。父親は死亡、息子は重症を負い、救急車で病院に搬送された。運び込まれた男の子を見た瞬間、外科医が思わず叫び声を上げた。「手術なんてできない、その子は私の息子だから」

無意識バイアスが存在することを前提として、ジェンダーギャップを解決していく方法の手がかりを知りたいという方におすすめの本です。

最後に

本を読む中で共通して登場した概念が「無意識バイアス」でした。

意図して偏見や差別をしている人は多くはなくて(少なくとも私のまわりにはほとんどいない)、 自分では気づかないうちに偏見や差別を含んだ言動をしてしまうことのほうが多いのではないかと思います。 私自身も偏見も差別もしたくないと思っているわけですが、 これまで言ってきてしまったことも多いし、きっとこれからも言ってしまうこともあると思います。

でも、無意識だから仕方ないではなくて、これからの自分を自分でコントロールしていくために、どんなことが偏見や差別にあたるのかをまずは知る必要があると考えています。 知らないことを意識するのは難しいけど、知っていれば自分で気づいて回避できるかもしれないので。

無意識バイアスについては、メルカリさんの研修資料がわかりやすくてすばらしかったのでこちらもどうぞ。

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最後に、ちょっと古いですがわたしの好きな動画を紹介します。

当時話題になったのでご存知の方も多いと思いますが、見たことない方は短いのでぜひ見てみてください。 「無意識のうちに自分に呪いをかけていないかな」と見つめ直す機会をくれる動画です。

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